腹式呼吸(ふくしきこきゅう)とは?
腹式呼吸とは「横隔膜」を使って行う呼吸法です。横隔膜は胴体の真ん中近くに位置し、肺のある胸部と腸などの臓器がある腹部を仕切るドーム型の膜状の筋肉です。空気を交換するのは肺ですが、肺自体は伸び縮みできるわけではありません。そのため肺の周りにある筋肉や骨、横隔膜が動くことで、呼吸ができます。
息を吐ききってリラックスした状態のとき、横隔膜は空気をすべて吐いて小さくなった肺と一緒に上がっていきます。そこから息を吸うと横隔膜が下がって肺も膨らみ、口や鼻から空気が入ってくるというのが、横隔膜を使った呼吸のメカニズムです。
腹式呼吸がもたらす効果
1リラックス
腹式呼吸をするとリラックス効果を得ることができます。
腹式呼吸で使う横隔膜には自律神経が集中しているため、腹式呼吸では副交感神経が優位になります。
副交感神経が優位になると、心機能が安定し心身の緊張がほぐれやすくなります。
また眠る前に腹式呼吸を行うと、体がリラックスするため質の良い睡眠をとることができま。
腹式呼吸をゆっくりと数回行うことで、寝付きも良くなるでしょう。
2声量の強化
腹式呼吸をすると声量の強化にもつながります。
腹式呼吸を行うことでおなかから声を出せるようになり、喉への負担が軽くなります。
腹式呼吸を使った発声には大きな声を出せる、長時間会話していても疲れにくくなるというメリットがあります。
腹式呼吸を意識しながらの発声は難しいと感じるかもしれませんが以下のように段階を踏んで少しずつ慣らしていくと良いでしょう。
【腹式呼吸を意識した発声】
- 腹式呼吸で息を吐き出すときに「ハー」と声にならない程度の発声をしてみる。
- ゆっくりと腹式呼吸を意識しながら「ハー」「アー」と声を出して言う。
- 普段の会話でもこの発声法を取り入れて話すことを意識してみる。
3消化機能の改善
腹式呼吸には消化機能を改善する効果もあります。
腹式呼吸では横隔膜を大きく動かすため、おなかの中の圧力が高まります。
おなかの中の圧力が高まると、排便をサポートしてくれるため便秘の改善につながります。
また腸が刺激され便意も起こりやすくなります。
便秘にお悩みの方は食事の改善などと合わせて腹式呼吸も行うと良いでしょう。
4基礎代謝の向上
腹式呼吸をすると基礎代謝が向上します。
これは、腹式呼吸をすることにより普段あまり使われていない筋肉が鍛えられ筋肉量が増えるためです。
腹式呼吸で使う横隔膜は「インナーマッスル」の一つです。
腹式呼吸では横隔膜の他に、腹横筋などのインナーマッスルも鍛えられるといわれています。
筋肉はエネルギーをたくさん使うため、筋肉量が増えると基礎代謝が高まります。
5腰痛予防
腹式呼吸には腰痛予防の効果も期待できます。
ヒトの内臓は腹膜で囲まれており、腹膜は腹圧(腹腔内圧)と筋肉で支えられています。
腰痛予防には正常な腹圧を保つことと、おなか周りの筋肉を鍛えることがポイントです。
腹式呼吸は腹圧を高めたり、腹筋を鍛えたりする効果があります。
腰痛予防に効果的なトレーニングとして、あおむけの状態で腹式呼吸を行うドローインがあります。
ドローインは、あおむけになり膝を曲げた姿勢で行います。
ゆっくりと息を吐きながらおなかをへこませて、その状態をキープします。
おなかを膨らませて大きく息を吸い込み元に戻します。
ドローインではおなか周りをコルセットのように覆っている筋肉が鍛えられるため、腰への負担を軽くすることができます。
6姿勢の改善
腹式呼吸は姿勢の改善にもつながります。
姿勢が悪くなる原因は、利き手や利き足、足の組み方といった個人の癖によって手脚などの骨の周りの筋肉のバランスが崩れることです。
筋肉のバランスが崩れると、脊柱が曲がってしまいます
腹式呼吸を意識すると、腹圧が高められるため脊柱を安定させることができます。
姿勢改善にも腹式呼吸は効果を発揮できます。
腹式呼吸のやり方
背筋を伸ばして、鼻からゆっくり息を吸い込みます。このとき、丹田(おへその下)に空気を溜めていくイメージでお腹をふくらませます。
つぎに、口からゆっくり息を吐き出します。お腹をへこましながら、からだの中の悪いものをすべて出しきるように、そして、吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐くのがポイントです。
回数は1日5回くらいから始め、慣れたら10~20回が基本ですが、その日の体調に合わせて、無理なく楽しみながらやりましょう。
- 吸うときは鼻からゆっくり、おへその下に空気を溜めていくイメージで
- 吐くときは口からゆっくり、からだの中の悪いものをすべて出し切るイメージで
- 吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐く
- 1日10~20回を目安に、無理なく続ける
腹式呼吸にはリラックス、消化機能の改善、基礎代謝の向上、腰痛予防、姿勢の改善などの効果があります。
腹式呼吸は慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、慣れてしまえばどこでもできます。